瑞宝太鼓 ~みはる台小学校にてユニバーサル公演事業を行いました~
12月13日(火)、文化庁による令和4年度「文化芸術による子供育成推進事業 ユニバーサル公演事業」の一環として、諫早市立みはる台小学校で、瑞宝太鼓のワークショップが開かれました。参加したのは、当校の10名の児童です。
ユニバーサル公演事業(以下ユニバ事業)とは、小・中・特別支援学校等において、一流の芸術団体が公演やワークショップを行います。未来を担う子どもたちの豊かな発想力やコミニュケーション能力、芸術を楽しむ力の向上を目指し、表現の多様性や障がいへの理解を深める体験を提供することが目的です。
ユニバ事業に申し込んだ全国の学校のうち、瑞宝太鼓のプログラムが実施されるのは、当校を含む全国13校です。
長崎だけでなく、広島や富山など全国各地を飛び回り、13校の児童と太鼓を通した心の交流を行います。
当校でのワークショップは12月6日、13日、20日の全部で3日間。21日には、3回の練習の成果を発表します。今日はそのうち2回目の練習日です。
開始時間の10時40分前になると、体育館前に元気な児童の声が聞こえました。
「おはようございます」
「手に持っているものは何ですか」―「バチです」
「目の前にあるのは何ですか」―「たいこです」
前回の復習をふまえた練習が始まります。
瑞宝太鼓のメンバーが特に大切にしている練習法は「口(く)唱歌(しょうが)」。口(く)唱歌(しょうが)とは、和太鼓の伝統的な練習法です。リズムを言葉で歌いながら、身体で覚えていきます。
「そーれ」「そーれ」「そーれ」「そーれ」
「ドン・ハイ、ドン・ハイ、ドン・ハイ、ドン・ハイ」
「どん・どん・どん・どん・よかったな」
「ズンズンズンズン」
演奏する曲は、「かすがい」。
かすがいとは、家の柱と柱をつなぎとめるために打ち込む両端の曲がった大釘のこと。
瑞宝太鼓と児童が、太鼓の演奏を通じてつながり、時が経っても、その思いや絆は離れることなく、心の中に残っていてほしい、という願いを込めて、このコラボレーションのために作られた曲です。
中太鼓パートと、締太鼓パートの2つから構成されています。
まだ太鼓という楽器に慣れない児童の傍らには、瑞宝太鼓のメンバーが寄り添い、楽譜を指で示します。
「ドン・ハイ、ドン・ハイ、ドン・ハイ、ドン・ハイ」
両手で力強くバチを握り、交互に腕を振ります。
「芸術」、「公演」という言葉を聞くと、とても壮大で、どこか自分とは遠く離れたイメージを持ってしまいます。
しかし、そうではなく、芸術はもっと私たち一人一人に身近で、誰でも気軽に参加できるものです。
そうした空気を作り上げ、児童のやる気を高めていくのはやはり、プロである瑞宝太鼓のメンバーです。
「子どもたちと交流するのはとても楽しい。僕たちが元気をもらっています!」と話します。
児童に「一流の芸術にふれてほしい」「音楽の楽しさ、夢を持つことの大切さを届けたい」
そんな思いで瑞宝太鼓はユニバ事業に申し込みました。
障がいと向き合いながら活動してきた瑞宝太鼓だからこそ伝えることができるメッセージがあります。
12月21日には、3日間の練習の成果を全校生徒204人の前で披露します。
「本番は瑞宝太鼓のみんながついているから、大丈夫。きっとできます!」
最後に児童を励まし、練習は終わりました。
12月21日(水)、練習の成果を披露する発表会が行われました。1回目の演奏では1年生~3年生、2回目に4年生~6年生が演奏を聴きます。
最初は、瑞宝太鼓の演奏から始まります。
「ドン!」
重厚な一打で幕が上がると、思わず「うわー!」と耳を押さえ、声をあげる児童。
赤と青の幕が垂れ下がったステージには、黒と金の法被を着た瑞宝太鼓のメンバー。
確かな迫力があります。
演奏が始まると、児童はノリノリです。自分の膝をたたいて一緒に太鼓を打つ真似をしています。
曲名は「鼓(こ)心(こ)路(ろ)」。
瑞宝太鼓メンバーの中村慶彦さんがオリジナルで作調した曲です。1つの締太鼓に、こころを込めて演奏する、という気持ちを表現します。
いよいよ次は児童の出番です。「みはる台小学校」と書かれた赤い法被を着た10名が、舞台袖からステージに上がります。
3回の練習に加え、朝の時間などを使い、基本の構えや打ち方を少しずつ練習してきました。
演奏するステージには本番用の明るいライトが当たり、気分も上がります。
ライトがあると、マスク越しでも顔の表情がよく見えます。
演奏が終わると拍手喝采です。
「演奏どうだったでしょうか~?」
「すごかった~」「楽しかった~」
演奏に聞き入った児童からは歓声が上がりました。
演奏を終えたある児童は「練習は難しかったけれど、(練習を重ねて)うまくたたけてよかった」と充実感に浸ります。
体育館全体に太鼓を打つ楽しさ、自分の気持ちを音で表現する喜び、皆で演奏する一体感が満ち溢れました。
ユニバ事業には、音楽(和太鼓)だけでなく、演劇や美術、舞踊など多くのカテゴリーがあります。
校長先生は「地元で、児童と一緒に参加できるものが良い」と、瑞宝太鼓の和太鼓を選びました。
瑞宝太鼓のメンバーと一緒のステージを経験することで、「障がいがあっても、これだけ輝けるんだ、と児童に知ってほしい」と語ります。
子ども時代に大きなステージに立ち、大勢の人たちの前で拍手喝采を浴びた経験は、きっと生涯忘れることはなく、後々の人生を支えてくれることでしょう。