小さな変化・成長を見逃さず、共に喜べる人でありたい。
池下 知奈美さん 「楽しむ」を支える。
「着ている洋服のファスナーを自分で閉められるようになった」とか、「ボールペンの組み立てができるようになった」とか…。
周りから見たら、本当に小さな小さな変化に過ぎないかもしれません。
でも、かかわっていく中で、利用者さんのできることが増えていくことが、とても嬉しいんです。
重度な障がいのある方の日中活動の場を提供している生活介護事業所「TERRACE やまびこ(旧名称:わーくやまびこ)」で、支援員として働く池下 知奈美さん。
接客・販売という全く違う仕事から、障がい者支援の仕事へと転職し、もうすぐ2年が経とうとしています。
と語る池下さん。
未経験・違う分野からの挑戦をスタートさせた池下さんの目に映る障がい者支援という仕事は、いったいどのようなものなのでしょうか?
■ 販売・接客の仕事から、福祉の道へ。
人と接することが好きなので、接客・販売の仕事も楽しかったです。
でも、これから先の自分のキャリアを考えたときに、「手に職をつけたいな」と思うようになりました。そんな頃に仲良くなったお客様が福祉の仕事をしていて、楽しそうに話されるのを聞いていて、「福祉の仕事もよいかもな」と思ったんです。
新しい道に進むことを決めた池下さんは専門学校に通い、介護福祉士の資格を取得します。最初は高齢者介護の道に進むことを考えていたそうですが、就職活動で出会った南高愛隣会の職員の人柄の良さ、楽しそうに働いている姿に魅かれ、未知の世界だった障がい者支援の道へ歩みを進めることになります。
■ 「コミュニケーションできない」のではなく、やり方が違うだけ。
「TERRACE やまびこ」で、池下さんが支援する方々は、重い障がいがある方も多く、ちょっとした変化などにも敏感で、不安になってしまうこともあります。だからこそ、一人ひとりの特性や、その日の気分などをしっかりと把握し、じっくりと向き合うことが大切です。
重い障がいを持つ人との関わりは初めてだったので、正直最初は「コミュニケーションが上手くできるかな?」「自分にも務まるかな?」という怖さや不安も多くあったそうです。
しかし、その不安も利用者の方とかかわる中で、日々薄れていきました。
もちろんご自分の想いを伝えるのが難しかったり、ちょっとした変化に弱かったりといった、障がいの特性からくる苦手なこともあります。
でも、実際にかかわってみると、重い障がいのある方は「コミュニケーションができない」のではなくて、方法が違うだけなんだと気づきました。
例えば、言葉ではなく絵カードを通して説明するなど、一人ひとりの得意・不得意に合わせて、様々な工夫をすることで、意思疎通ができるそうです。
どうやったら伝わるか、どうやったらその方の想いを理解できるか。色々と考え、試行錯誤しながらかかわっていくことが楽しいし、理解し合えたと思えた瞬間がとても嬉しいと、池下さんはこの仕事の魅力を語ってくれます。
以前は利用者さんの言動で、分からないことがあると「何でそういうことするの!」って憤ってしまっていたんですが、今は「なぜ、そういうことをするのだろう?」と背景を考えるようになりました。
そうすることで気づくこと、見えてくることが増えてきて、ちょっと成長できて来たのかなと思います。
一人ひとり個性も障がいの特性も違うからこそ、「こうすればよい」という明確な正解はありません。だからこそ、一人ひとりとじっくり向き合い、よいかかわり方を探していく。その深いかかわりこそ、障がい者支援の難しさでもあり、やりがいであるのかもしれません。
■ 小さな変化も見逃さず、一緒に喜べる人でありたい。
「TERRACE やまびこ」では、利用者一人ひとりに合わせた難度の「自立課題」を設けて挑戦してもらい、一人で達成できることを増やし、自己肯定感を高めてもらうことを大切にしています。
「できない」と思っていたことが「できた!」となると、ご本人もとても嬉しそうだし、私たちも嬉しくなります。
傍から見ると、本当に些細な事かもしれないのですけれど、そういった小さな成長や喜びを見逃さずに大切にしていきたいなと思っています。
全くの異分野から、障がい者支援という新たな道を歩み始めた池下さん。これから先、もっと深く利用者とかかわって、支援の幅を広げていきたいと語ります。
経験豊富でたくさんのアドバイスをくれる先輩たちみたいに、利用者さんのことをもっと深く理解して、「この人にはこんな支援がよいのでは?」と引き出しを増やしていきたいですね。
そうなれるために、どうすればよいかですか…?
きっと、もっともっと利用者さんとたくさんかかわることが大切ですよね。
そんな風に、これからの目標・展望を語ってくれました。
目の前の人の小さな変化・成長も見逃さずに、一緒に楽しみ喜ぶことができる池下さんにとって、障がい者支援という仕事は、とても向いている仕事なはず。これからきっと、今以上に誰からも信頼される職員として、成長を続けていくはずです。
※「楽しむ」を支える仕事
様々なサポートが必要な障がいのある人たちの日常生活を応援します。
一人ひとりの個性や特徴、実現したい想いなどに合わせ、地域社会の中で様々な人たちと関わりながら、その方らしい生き生きとした日々を過ごせるよう、幅広いサービスを提供しています。