職員紹介2021 / 02 / 02

「おはよう」から「お休み」まで。「ふつうに暮らす」を支える仕事。

森谷 志帆さん 「暮らし」を支える。

空の色が少しずつ茜色に変化してゆき、一日が終わろうとする夕暮れ時。「HOMEさいごう」でライフサポーターとして働く森谷 志帆さんは、グループホームで利用者さんと談笑をしながら、夕食の準備を進めていました。

「今日の作業はどうでした?」
「疲れたけど、楽しかったかな。」
そんな会話が飛び交います。

利用者の皆さんにとって、食事はとても楽しみな時間の一つ。自然と笑みがこぼれます。

夕食が終わると、それぞれの団欒の時間。リビングに残ってテレビを見る人、お部屋に戻って寝る準備をする人、浴室の方からは「お風呂出たので、薬をぬってくださーい!」と声がかかります。

そこにあったのは、何気ない日常の時間でした。

障がいのある方が地域の中で、普通の暮らしを営めるように。
南高愛隣会では、それまで当たり前だった郊外にある大規模な入居施設という形を変え、全国に先駆けて地域の中に小規模な形の暮らしの場をつくってきました。

今では、少人数でのグループ生活から、アパートの部屋での一人暮らし、結婚して一軒家での家族の暮らしまで、それぞれのライフステージに合わせたグループホームを長崎県内で約160運営しています。

ライフサポーターは、グループホームで生活する利用者一人ひとりが自立した暮らしを営めるように、それぞれの状況や特性に合わせたサポートを行っています。

日々の「普通の暮らし」を支えるライフサポーターの仕事について、森谷さんにお話を伺いました。

■ 幅広い経験ができるから、その方の暮らしを深く知れる。

医療福祉の仕事をしている家族が多かった影響で、自然と福祉の仕事に興味を持ったという森谷さん。大学時代に様々な福祉領域に触れる中で、障がい者福祉が一番自分に向いているのではと思ったそうです。

実習で障がい者施設に行き、利用者さんと関わる中で、「この方はどのように思っているのだろう?」とか、「この方が望んでいることは何だろう?」と考える機会が多く、そうやって人の気持ちや考えを探求していくことが面白く、障がい者支援の仕事をしたいと思いました。

「優柔不断なところがあって、飲食店でも目移りしちゃって、なかなか注文を決められないタイプなんです」と笑う森谷さん。
様々な事業展開をしていて、幅広い経験が可能な南港愛隣会に魅力を感じ、就職先に選んだそうです。

森谷さんは入職後、現在のグループホームの他に、複数の職域の仕事を経験するジョブローテーションの制度で、重い障がいのある方の日中生活をサポートする「生活介護」と、就労訓練の場である「就労継続支援B型」の事業所、計3か所での勤務を経験しました。

グループホームという生活の場で知れるのは、利用者さんが過ごしている朝と帰宅後の夜の時間だけ。反対に日中活動の場では、お家での暮らしの様子は分からない。3つの事業所を経験できたことで、より深く利用者さんの日々の暮らしを理解でき、支援にも役立っているように思います。

目の前の人が考えていること、感じていること、伝えたいことは何なのか、しっかりと受け止めていきたい。

そんな想いで障がい者支援の仕事を選んだ森谷さんは、複数の職場での経験を通して、利用者さんの暮らしを多面的に知ることができたことで、それまで以上に障がい者支援の仕事への関心を深めていきました。

■人の可能性を信じて、「その方らしい暮らし」を一緒につくる。

長くかかわることで、利用者さんの個性や「らしさ」、日常のちょっとしたことにも気が付けるようになってきたと語る森谷さん。そういった気づきを意識しながらかかわることで、相手から信頼されたり、心を開いてもらえたと思えた時が一番嬉しいと感じるそうです。

最近、ビーズでブレスレットをつくることにはまっている利用者さんがいるんです。輪をつくることまではお一人でやれるのですが、最後に結ぶのはちょっと難しい。

その時に必ず私に「結んで」って頼みに来てくれるのですが、そんな時に「あ、頼ってもらえてるな」って実感できて、嬉しくなるんです。

 

この仕事を始めた頃は、「利用者さんができないことをしっかり支援しなきゃ!」って思いが強かったのですが、最近は少し変化してきて「私たちが先回りすることで、本来できることまで奪ってはいないか」と意識するようになりました。

利用者の皆さんから信頼をもらうだけでなく、森谷さん自身も利用者さんの可能性を信頼し、自立した暮らしをしっかりとサポート・応援する。

お互いの事を理解し、関係性を深めていく中だからこそできることなのかもしれません。人の暮らしに深くかかわる仕事だからこそ、感じられる魅力・面白さに気が付かされます。

■“声なき声”を聞ける人になりたい。

3年間、3つの事業所での経験を経て、これからどんな道―キャリアを描いていきたいですか?

お話の最後に、森谷さんにそんな問いを投げかけてみました。

声なき声、をもっと聞ける人になりたいなと思います。

特に障がいの重い人は、自分の想いを届けることが難しい場合が多くあります。どうやったら想いを理解できるか、どうやったら実現できるのか。その人のことをより知って、ちょっとした変化も見逃さないようにすることで、少しでも形にしていきたいと思っているんですが…。

南高愛隣会には他にもたくさん魅力的な事業があって、興味あるものもたくさんあるので、色々経験してみたいです。まだまだ道の途中ですね。(笑)

障がいのある方が地域で自立した暮らしを営むとき、それぞれの環境や障がいの特性、「こんな風に暮らしたい」という想いをしっかりと理解し、一緒に考えてくれる存在が重要となります。

「おはよう」から「お休みなさい」まで、温かく迎えてくれるライフサポーターの存在が、たくさんの「普通の暮らし」を今日も支えています。


※「暮らし」を支える仕事

「1人暮らしをしたい」「結婚して子供を育てたい」。どんな風に暮らしたいかは人それぞれ。公営住宅からバリアフリー型の住環境と、給食センター、恋愛支援などのソフト面を組み合わせたトータルな支援で、地域の中でライフステージに合わせた暮らしを実現します。