「挑戦」を応援し、豊かな人生を共に描く。
太田 景介さん 「働く」を支える。
長崎県諫早市―観光名所の「眼鏡橋」からもほど近いアーケード街の一角に、南高愛隣会が運営する障がいのある方の就労移行支援事業所「CAREER PORT ほんまち」があります。
「CAREER PORT ほんまち」では、一般企業への就職を目指す方のために、ビジネスマナーやPCスキル、社会人として仕事をするために生活リズムをつくるなど、幅広い形で就職のための準備のサポートを行っています。
「働く」とは、いったいどういうことだろう?
訪れた時間は、これから就職するための準備をしている利用者さんへの授業の真っ最中。技術や知識の習得も、もちろん大切ですが、地域社会の一員として働き、活躍できるよう、働く上での心構えもしっかりと伝えていきます。
「CAREER PORT ほんまち」の所長代行・サービス管理責任者として勤務する太田さんは、就労移行支援の仕事の魅力をそのように語ります。太田さんご自身の歩んできたキャリアも伺いながら、就労移行支援のお仕事の魅力を探ります。
■働くことを通して、豊かな人生を実現してほしい。
太田さんは、就労支援の仕事を「デザイン」と例えます。
利用者さんの声に耳を傾け、一人ではなかなか形に出来ないその想いを二人三脚で一つの「絵」にしていきます。時にはうまくいかず、一度消しゴムで消して、もう一度描きなおす。その繰り返しだと語ります。
当然上手くいくことばかりではなく、壁にぶつかり、悩むこともたくさんあります。そんな時こそ、利用者さんが壁を乗り越え、成長していけるように、自分たちも一緒に考えます。
やっぱり利用者さん本人が「これをやりたい!」「働きたい!」といった想いを持ち、前向きに頑張れることが何より大切なので、僕らの仕事はそういった意欲を引き出せる存在でありたいと考えています。
「働きたい!」という利用者さんの想いと頑張り、それを支える太田さんたち支援者のサポートで、利用者さんの家族が「まさかこの子が企業に就職できるとは思わなかった」と驚くような成長をされることも。
「そうやって地域の中で活躍できる人が増えていくことが、とても嬉しいんです」と太田さんは笑顔で語ります。
仕事をして、自らお金を稼ぐだけでなく、これまではしたことのない様々な経験をする。ここで出会った仲間とお休みの日に楽しい時間を過ごす…。
「働く」ということをきっかけに、たくさんの挑戦・経験をして、それぞれの人生が豊かになってほしい。
それが、太田さんたち支援者の願いです。
■希望とは異なるキャリア。そこから学べたもの。
太田さんが、障がいのある方の就労支援という仕事に興味を持ったのは、就職活動で南高愛隣会の話を聞いたことがきっかけでした。
大学時代は高齢者介護に興味があって、障がい者支援のことはあまり知りませんでした。でも、たまたま学校の合同就職説明会で南高愛隣会の話を聞いて、利用者さんのニーズに合わせて、それまでの常識にとらわれず挑戦する法人の姿勢を知り、「これはただの福祉の仕事じゃないぞ…!」と興味を持ちました。
同時に、障がいのある方が働く環境を整えていく就労支援の話も聞き、挑戦的で面白そうだなと感じました。
そうして就労支援の現場で働くことを希望し、南港愛隣会に入職した太田さん。入職後、半年間の研修期間では、障がい者支援のことを深く理解するため、重度な障がいのある方の生活介護の仕事がメインだったそうです。
そこで、太田さんは、将来自分のやりたい就労支援にもつながる、障がい者支援のいろはをたくさん学んでいきます。
そして、いよいよ就労支援の仕事が本格的にできる思った矢先、法人の事業再編で、当時太田さんが働いていた長崎地区の就労支援事業を閉じることとなり、太田さんの夢は一度遠のいてしまいました。
そんな太田さんの想いを聞き、上司は他のエリアでの就労支援の事業所への異動の道筋も整えてくれた上で、太田さんに今すぐ異動をする以外の選択肢として、別の道も提示してくれました。
「太田さんの『就労支援をしたい』という気持ちは分かった。今すぐ異動もできるけれど、障がい者支援の根本でもある重度障がいの方の支援を、太田さんにはもう少し学んでみてほしい。その経験が絶対に太田さんの将来に活かせるから」と話してくれたんです。
それだけ本気で自分の将来のことを考えてくれるんだなと嬉しく思い、上司が示してくれた道を選ぶことにしました。
「やりたいことができなくなった…。」「道を断たれた…。」
そのようなネガティブな想いではなく、本当に自分がやりたいことにつなげるため、太田さんは前向きに重度障がいのある方の生活介護や、生活の場であるグループホームの支援という仕事に再び取り組むことになります。
そして5年目、待望の就労移行事業に配属になりました。「やっときた!」と目指していた仕事ができる喜びもあると同時に、「それまでの4年間の仕事も全く無駄ではなく、貴重な体験だった」と太田さんは振り返ります。
それぞれの仕事にはやってみると、それぞれの面白みがありました。最初から希望通りの就労移行の仕事に就けていたら、もしかしたら視野が狭いまま、壁にぶつかっていたかもしれません。
「働く」ということだけでなく、障がいのある方の生活の場や就労以外の日常の場を見れたことで、自分の考えや支援の幅が広がったと思え、本当に良い経験でした。
太田さんが支援する利用者の方々も、全ての人が望み通りの仕事に就けるわけではなく、就職をしたとしても思っていなかった壁にぶつかる機会も少なくありません。
そんな時、思い通りにいかないことを嘆き、立ち止まってしまうのではなく、長い職業キャリアにどう生かせるのかを考え、ポジティブに向き合い、歩んでいくことが大切です。
自分自身も様々な経験を通し、悩みながらも成長してきた太田さんだからこそ、利用者一人ひとりのキャリアに真摯に向かい合えるのかもしれません。
■「僕らがいるから大丈夫!」と、挑戦する人の力になりたい。
「CAREER PORT ほんまち」を卒業し、それぞれの職場で挑戦している人たちの近況を知ったり、便りが届いた時が何よりの喜びと語る太田さん。
活躍している様子を見るのはもちろん、迷ったり悩んだりした時こそ、自分たちが力になりたいと考えています。
「大丈夫!何かあったら、俺たちが後ろにおるけん!」
いつもそう伝えてます。働くことは挑戦の連続だと思います。
だからこそ、いつだって彼らの力になりたいです。
障がいのある方が、「~したい」という想いを胸に就職し、地域の中で働くことは、本人だけでなく雇用する企業や地域社会にもよい変化をもたらすことがあります。
障がいが有り無しに関係なく、誰もが地域の中で活躍できるフレンドリーな社会の実現を目指して。
「挑戦する人」を応援する人たちの挑戦も、また続いていきます。
※「働く」を支える仕事
障がいのある人たちが、「働く」ことを通して、地域社会の一員として活躍することを応援します。
商品の質で勝負する「働く場」、一般企業への就職トレーニング、地元企業と連携して活躍できる職場の開拓など、やりがいと誇りを持って働ける仕組みをつくっています。